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2006年08月30日

D-SLR

  [D200]

「(デジタル)一眼レフカメラ」でなくては撮れない写真というのは、本当のところ少ない。
いわゆる標準域の画角でスナップなどしている分には、コンパクトカメラの方が使い易かったりする。
それを、重たい機材を抱え手間と暇を費やしてわざわざ苦労をしたがるのは、ある種の自虐行為、マゾヒスティックというよりはもう少し健全に、修行僧のような心持ちも何処かにある。

 ハイビスカスの蘂(シベ)
_DSC2705.jpg
 D200 + Zoom Micro70-180mm

「一眼レフは伊達や酔狂じゃない」と言いたいところだけれど、実は「プロは伊達で持ち、アマは酔狂で買う」場合が多い。

特にプロの場合は信頼されて仕事を得るためには少なからずのハッタリも必要だし、アマチュアの場合には「きっと良く撮れている」と自分自身が信じ込むための理由の一つとして、良い機材は重要な役割を果たす。

「弘法は筆を選ばず」と言いますが、上手い人は何を持たせてもそれなりの結果を出すわけです。

コンパクトカメラでも良い写真を撮る人は沢山います。
でも、受光素子のサイズが1/1.8とか1/2.5インチのカメラでは思うように絞りが開かなかったり、ディテールが欠落したり階調が失われてしまったり、或いはレリーズのタイムラグが大きすぎて思うような絵にならなかったり・・・と、そこでようやく一眼レフ本来の必要性というか優位性が出てくるのです。

例えば、1秒という実は非常に長い時間の中から、数十分の1、或いは数百分の1秒を切り取る。
通常語る最小の時間である「1秒」の中から意図的に瞬間を切り取るためには、指先からの指示を受けたレリーズボタンを通じて躊躇無くシャッターが反応しなくてはなりません。
そしてその瞬間を決めるために、ファインダーから届く光はリアルタイムであり、記録される光と等質であり(ほぼ)等量で無くてはならないのです。
ここに及んで、一眼レフは圧倒的に優位な存在地位を現わすのです。

コンパクトカメラと違い、一眼レフでは絞りやシャッタースピード、そしてピントなど、撮影者の操作する部分が多く一見難しいものに見えます。
実際にフルマニュアルで撮るとなると、露出の決定や、その際に選択される絞りの値と、更にはその絞りに関わる被写界深度とピントの位置の関係---或いはその逆に、必要な被写界深度から選択されるべき絞りの値とピント位置の関係、そして適正露出の範囲内で手ブレ・被写体ブレの起こらないシャッター速度を設定可能な感度の選択と決定---などを理解せねばならず、短時間に複雑な操作と作業を要求されます。
ところが、使い慣れてくるとコンパクトカメラよりも一眼レフの方が使い易くなります。
記念写真1枚撮るにしても、意図的にピントを設定できますし、被写体や背景に応じた絞りを選択できます。
写真を撮る際の様々な要素について、適切、正確、そして簡単に設定できるように進化した結果が一眼レフの形です。
もちろんコンパクトカメラも同様の進化をしてきたのですが、こちらの場合は如何に撮影者の操作を少なくして良好な結果を得るかということ・・・小難しい話は一切無しで、兎に角ボタンを押せば誰にでもそこそこの写真が撮れるようにとの目的で進化してきた結果の形です。
だから、誰が撮っても一定の結果を残すことは出来ますが、撮影者の意図や時として偏った拘りなどを適切に反映させることは、却って難しくなります。

コンパクトカメラを使いこなしながらも現在の仕上りに戸惑いや不満があるのなら、一眼レフを試して損はない、と思います。

確かに「光学機器+精密機械+電子機器」の複雑怪奇な取り扱い、という不安はありますが、通常使用する限りではめったに壊れることなどありません。
デジタル一眼にてよく言われるような、撮像素子に付着するゴミも心配する必要も無いでしょう。
この私でさえ、撮影に支障のあるゴミの付着は年に一個あるかどうか、です。
最近ではダストリダクション機構を備えた製品が増えてきましたが、実際に支障となるゴミは、そんなギミックでは対応できないような油分を含んだ嫌らしい奴ですから。
(だからといってダストリダクション機構を否定するわけではありません)

写真のデジタル化によってカメラそのものが、大きく変化してきています。
そして、パソコンやインターネット、更にはブログをはじめとした情報発信形態の変化により、写真を撮る行為そのものも、変化しています。
これまでは(記念写真など)私的なものが多かったのに比べ、多くの人が簡単に自分の「作品」を撮ることを目的に撮影し、公開、発信できる環境にあります。
ひっそりと引き延ばして家の壁に掛け身内相手に自慢?してきた時代は終わり、ともすれば、素人とて世界中を相手に感動を伝えることが可能な状況です。

私自身がそうしたいと強く思うわけではなく、そんな風にして気負い無く、しかし心を打たれる写真に一枚でも多く触れることが出来るようになれば、どんなに素敵なことでしょうか。

良い時代になったものです・・・なんだか随分と年寄りめいた言葉ですかね。
いやしかし、楽しいじゃありませんか。

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2006年08月30日 11:14に投稿されたエントリーのページです。

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