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2007年04月09日

ヤマユリ発芽促進温度処理

  [Garden]

ソメイヨシノの季節ですが、、、用意しながら忘れていた話題を一つ。

職場周辺にはヤマユリ(山百合)が自生しています。
元より自生種なのですが開発に伴い移植されたりした物も多くあり、それらがこぼれ種で増えて、でも群落とまでは言えませんが季節になればあちこちで大きな花を咲かせます。

DSCN1511.jpg

ところが、昨年は気候変動のためか、かなりの株が餌を求めてきたイノシシなどに掘り起こされてしまって、今年以降の開花は淋しいものとなりそうです。
(大きなユリ根は彼らにとっても美味しいらしいです)
ただイノシシならまだしも、来場者による盗掘も少なからずあったりして・・・

そこで、残った株から種を採取し、採り蒔きをして増やしていこう、と言うのが現在のテーマでもあったりします。

▽一株に18の花を付けた。
残念ながら咲いているところは見られなかったけれど、駐車場脇のよく目に付く場所で2m以上に生長していた。
このまま朔が弾けても、周囲はアスファルトだから。。。
DSCN2210.jpg

▽朔花(さっか=「くさかんむり」に朔・花)を開いて種を回収した(これでもまだ半分ちょっと)
重さを量っておけば良かったかも。
DSCN2215.jpg

しかしながら、ヤマユリの種は高温休眠打破による発芽ですので、育てる方も忍耐が必要です。
 詳細は以下の論文pdfをご覧下さいませ。
 福島県農業試験場研究報告 第23号
 http://rms1.agsearch.agropedia.affrc.go.jp/contents/JASI/pdf/PREF/29-3303.pdf

III 種子の発芽について
 オトメユリ、ヤマユリともに秋に採集した種子をは種しても翌春には発芽しない。翌年の夏が過ぎてから地下での発芽が始まり、冬の低温を経ては種後2年目の春にようやく地上部に芽を出してくる。いわゆる"地下発芽型"のユリである。
 第5表 地下発芽型ユリの地上発芽のためのステージ
1ステージ  I 地下発芽誘導期
2  〃  II 地下発芽期
3  〃  III 小球形成期
4  〃  IV 低温感温期
5  〃   V 展 葉 期
 ※上記の1~5は経過年に相当する訳ではありません
初めての春には何も起こらず、一度暑い夏を経験してから次の冬を経験してようやく地下で発芽し、それがまた次の年に小球根を作り、そしてまたその次の年(つまり3年目)にようやく小さな芽を出し、球根を肥大させ、4年目でやっと地上部に出た株を成長させ、そしてそして、花が咲くまでにはどんなに早くても5年は掛るという大器晩成型なのです。
そこで、この最初の休眠打破(上記引用先の「1ステージ I 地下発芽誘導期」にあたる部分)を人為的に行い、1年短縮してやろうという魂胆です。
高温処理とか恒温処理とか変温処理とか、色々な言い方があるようです。

▽昨年12月から高温処理を施し、3月に発芽を確認しました。
結構適当なやり方でしたけれど、思いの外の好成績です。
_DSC0206.jpg

詳細は、、、

 1.)まずバーミキュライトと無肥料用土をミックスして播種用土を支度(発芽床)。
 2.)発芽床を適度に湿らせ、採取したタネを混ぜてジップロックに入れる。
 3.)適当なサイズの段ボール箱の内側6面に断熱シートを貼り付け、保温箱とする。
 4.)ペット用ホットカーペット [アイリスプラザ] を 仕込み、2.)を保管。
 5.)温度の調整は当初は温度計を見ながらの手作業、オン・オフの間隔が掴めてからはタイマーに任せて放置。
 6.)12月から始め30度以上キープ
 7.)2月初旬には20~26度に落とす
 8.)3月上旬、保温をやめ室内放置(5~15度)

以上の経過で3月25日頃、少なくとも6割以上が発芽(というか発根?)しているのを確認
温度管理などの関係上、実験室や研究施設のようにもっとしっかりした設備が必要かと思いながらの実験でしたが、案外簡単に出来てしまったのでした。
ダメ元での実験でしたので投入した種は少な目でしたが、これならもっと多くの種を使っても良かったかとも思います。
ただ運が良かっただけの可能性もありますが、道が見えてきたような気もしますね。

参考アドレス
JA横浜
http://www.jakanagawa.gr.jp/yokohama/PDF/0602_04_midori.pdf

質疑応答はコメントにてどうぞ。

コメント (14)

HM:

山百合ですが、更に簡単なのを聞きました、種子が少しだけ割れたときに取りまき。発芽抑制がかかる前に蒔く方法です。10月ですか
私も蒔いてみたらすぐに発芽しました。一年の得です。

Fujie [TypeKey Profile Page]:

HMさん、情報ありがとうございます。
> 発芽抑制がかかる前
なるほど、これはもう少し調べてみなくてはなりませんね。
「取り蒔きをして翌年初夏には小球を形成した」という話を読んだことがあり、とても気になっていたところです。

亀井久明:

(管理者により住所等の個人情報を削除いたしました)

山百合の種子、たくさんお譲りいただけないでしょうか?

Fujie [TypeKey Profile Page]:

既に直接メールにてご返信をさせていただいたのですが、
繋がりというか、私の考えもありますので
以下にその内容をコメントとして書き込んでおきます。
-----------------------------------------------
さて、ヤマユリの種子をご希望とのコメントを頂きましたが、いくつかの理由によりご希望に添うことが出来ません。
そのうちの大きな物を2つ書きます。

1.遺伝子汚染の問題。
私はお住まいの○○県とは遠く離れた、山梨県在住です。
ヤマユリにつきましては現在のところ、メダカのように地域ごと遺伝子レベルでの差異について語られてはおりませんが、はたしてこれをどう考え、対処すべきか私自身結論に至っておりません。
あまり大袈裟に考えることも無かろうとは思いますが、自生種に影響を与える新テッポウユリの例もありますことから、特にユリ科の植物に関しましては少なからず慎重にならざるを得ません。
2.在庫?の問題
(こちらの方がより大きな理由ですが)
今現在私の手元にはお分け出来る程の数がありません。
会社の引き出しの隅から数粒は見つかるかも知れませんが、精々その程度です。

付け加えますと、ご承知のようにヤマユリは開花まで長い年月を必要とし、その過程で多くが(特に園芸栽培においては)ウイルス汚染などの為に淘汰され、多くの種子も僅かしか開花に至りません。
どのようなお考えで、どのような設備にて栽培をなさるのか、また、大量の種子をご希望される目的も分かりません。

これらを踏まえまして、少なくとも今現在のところご希望にはお応えすることが出来ません。
あしからずご了承ください。
-----------------------------------------------

中村 和徳:

山百合の栽培してます。種から初めて3年になります。初めは直播しましたが失敗のようです。二回目プランタンで1000粒ぐらい播き200・・300位発芽しました現在順調です。三回目5000粒播きましたが現在何も変化在りません。来年春が楽しみです。自然流で行っております。

Fujie [TypeKey Profile Page]:

中村さん、コメントありがとうございます。
ヤマユリは時間が掛かりますからね。
3年経って、実は1年目の種が土中で発芽していたなんてこともありますから、気長にやるのが良いみたいです。
顔を出した小さな葉っぱから1年毎に伸びて行くのを見るも亦、楽しからずや、ですね。

中村 和徳:

お早う御座います。今年は種が沢山取れました。昨年までは購入してましたが・・・

Fujie [TypeKey Profile Page]:

中村さん、よかったですね。
沢山増やしてください。
私はこの8月末から暫くは、山へ行ったりとか、庭の手入れどころではなかったもので、もう色んな意味で荒れ放題になってしまってます、、、
職場のヤマユリ計画も、来年からもう一度立て直しする必要がありそうです。
まあ、色々と考えるのも楽しいものですからね。

中村:

プランタンー21箱山百合の種6000~7000粒播きました。残り種は小さなビニール袋にビートモスと種を入れ土の中に埋めました。再来年の春に芽が出るでしょうか・・・・楽しみです

Fujie [TypeKey Profile Page]:

すごい量ですね(‥;)
早ければ来年発芽するものもあるかも知れませんね。
成長して大株になるまで、まだまだ手も掛かると思いますが、是非とも頑張って下さい。
焦らず気長に向き合うのが良いでしょうかね。

中村和徳:

一年振りですね・・時間と暇をかけ山百合を栽培してます。およそ2000粒播いた種は二年目は540個三年目8~10mm位100個6~8mm位100個3~6mm位100個合計300個です。プランタンで行ってますので成績はどんなものでしょうか・・・来年春には10mm位の球根は茎も出て葉も5~6枚付くでしょうかね四年目になりますから・・・其の後播いたおよそ5000粒の種も順調に育っております。花が1輪咲く球根になるのは5~10%位なのでしょうか

Fujie [TypeKey Profile Page]:

中村さん、こんにちは。
追加の情報ありがとうございます。
最終的に5-10%も花が咲いたら、それは立派な成果だと思いますよ。
自然の群生地などを見ても、数年のスパンでもさほど規模に変化は見えないと思いますので。
しかしながら2000とか5000とか、素晴らしい数ですね。
私は残念ながらあまり時間がとれないので、1-2年の初期の手伝いだけして後は自然に任せるやり方でしたが、ここ数年は気候的な原因もあるのか、なかなか以前の状態に回復してこないこともあり、今年からまた手をかけてみようかと思っております。
行き詰まった時には教えを請いに伺いますので、そのときはよろしくお願いしますね。

中村和徳:

今晩は中村です。暇に任して二年物三年物を全て植え替えました。山百合種およそ7000粒球根小球・極小1500球ありました。排水が良いのが比較的に大きくなるみたいですね。二年物は球根と言うより種に近いようですね米粒か小豆位ですね三年物は大きいのはビー球位ですプランタンでは限界ですかね

Fujie [TypeKey Profile Page]:

中村さん、情報ありがとうございます。
いやあ、すごい数ですね(^_^;)
三年物は開花に向けて、来期に充分肥大させてやりたいですから可能なら地植えが良いですよね。
でも数がすごい、、、
私もまた今年の種を回収しました。
どれほど時間がとれるかわかりませんけれど、また挑戦したいと思っています。

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2007年04月09日 21:39に投稿されたエントリーのページです。

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