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2007年07月31日

一期一会

  [miss M.]

中島みゆき
 『一期一会/昔から雨が降ってくる』
 2007年7月11日発売
世界ウルルン滞在記ルネサンス主題歌/エンディング
YAMAHA MUSIC COMMUNICATIONS CO.,LTD
 YCCW-30011
 ASIN: B000QEIW96

さて、ジャケットを見ますと、何と言うか、デカい文字です。
恥ずかしくなるくらい大きな文字でタイトルが書かれています。
写真も久しぶりの、ど・アップです。
とても"ふくよか"なのが気になりますけれど・・・それにしても、上手く言えませんがこのジャケット、何やら昭和っぽい匂いもします。
敢えて狙ったのでしょうか?


2000年7月 『地上の星/ヘッドライト・テールライト』(NHK総合テレビ「プロジェクトX~挑戦者たち~」主題歌/エンディング)
2003年7月 『銀の龍の背に乗って/恋文』(フジテレビ系ドラマ「Dr.コトー診療所」主題歌)
間に2006年2月、アルバム『転生』からシングルカットされた『帰れない者たちへ』 テレビ朝日系ドラマ「松本清張 けものみち」主題歌を挟み、シングルは番組用書き下ろしが続きます。

「3年B組金八先生」第2シリーズ(1980-1981、主演:武田鉄矢ほか)第24話にて劇中挿入歌として『世情』(アルバム『愛していると云ってくれ』収録)が衝撃的に使用され、このシリーズクライマックスシーンは今もってテレビドラマ史に残る名シーン、名選曲とも言われたりすることもあります。
以来、日本テレビ系ドラマ「家なき子」(1994-1995、主演:安達祐実)の主題歌として『空と君のあいだに』は146万枚を超え、同作続編やその後テレビ朝日系ドラマ「はみだし刑事」シリーズなど、ドラマ・TV主題歌ジャンル(?)ではヒットメーカーとして制作側から望まれることも多くなったようで、やがて「プロジェクトX~挑戦者たち~」や「Dr.コトー診療所」へと繋がります。

さらに昨2006年11月に発売されたアルバム『ララバイSINGER』に納められた『宙船(そらふね)』は、TOKIOへの初提供されたもののセルフカバー。
日本テレビ系ドラマ「マイ☆ボス マイ☆ヒーロー」(2006年、主演:長瀬智也)主題歌としてリリースされたTOKIOのシングル『宙船(そらふね)/do! do! do!』はオリコン初登場首位となるなど予想外のヒットとなり、2007年春の甲子園(第79回選抜高等学校野球大会)の開会式入場行進曲にもなりました。(TOKIO、中島みゆき 共に初)

かつては別れ歌、うらみ節、情念、そして根暗(ネクラ)の象徴とまで揶揄されていた歌い手と彼女の歌・詩が、何時の頃からか、人生の応援歌などとまで言われるようになりました。
しかしながら、彼女の曲にはごく初期の頃から現在まで、変わることなく一貫して流れるテーマ(のようなもの)が、おそらく、あります。

彼女自身は「詩(歌)の受け止め方は人それぞれ自由だから、どう解釈するかは聴き手に委ねる」という主旨の言葉を繰り返します。
解釈を限定することで、その歌の持つ世界をも限定したくない、と言うことです。
逆を返せば、それだけの広がりと深みを持つ世界を彼女の歌は持っている(意図的に持たせている)、とも言えるわけです。

ですから、ここから先は私流の解釈です。
曲の持つイメージをかなりの幅で限定させる恐れがありますので、ご了解の上で興味のある方は、引き続きご覧下さい。
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さて、『一期一会』です。
ボリューム的に小曲か、などと思っておりましたがさにあらず、久々に感動しております。
朝から晩まで、超・ヘビー・ローテーションです。

ここ数作のシングルリリース曲の殆どは、叙景的な喩えから視覚面での広がりを見せるものでしたが、どちらかと言えば暗喩などの少ない、比較的ストレートな内容の詩が多かったと思うのです。
しかしながら今作は、無限とも言えるほどに『時空』の広がりを感じさせます。
表に現れた言葉からは極ストレートに旅の途上での出会いを、「一期一会」という言葉に託して語られますが、これは主題歌として依頼された"世界ウルルン滞在記ルネサンス"という番組の内容からも想像が付くように、非常に分かり易く、叙情的にな景色です。
文学的には決して目新しくもなく、特異な喩えではありませんが、やはり、彼女の口から出る「道(途)」や「旅」などの言葉を耳にするとき、多くの場合でそれは「命」や「一生」などの比喩として託されています。
 (個々の検証は今回避けますが、例えば『わかれうた』や『旅人のうた』など)
また『夜会』でも、回を重ねるごとに「輪廻転生」や「命」、「魂」、或いはその来し方、行く先を語るようになりました。---vol.10 『海嘯』、vol.13 『24時着 0時発』、vol.14 『24時着 00時発』などはまさにそこがテーマそのものでした。
輪廻転生をストレートに表現した歌も少なからずあります。
『HALF』(アルバム『36.5C』に収録)などはその代表とも言えますし、近年ではアルバムタイトルがまさにそのものである『転生(TEN-SEI)』や、若干ニュアンスが違いますが『命のリレー』(アルバム『転生』に収録)がそれです。
今回の番組エンディングに使われ『一期一会』と同時に納められている『昔から雨が降ってくる』も同様、聴いて分かる通りストレートに、その「輪廻転生」や「魂の記憶」をファンタジックに歌っています。
同じディスクに納められ、大きく曲調も違わない風に作られているためか、尚更『一期一会』という曲にも同じ風の匂いを感じてしまうのかも知れません。

この曲を聴いて私が思い浮かべるのは、これまで出会いそして、読経の中、立ちこめる香の煙と共に彼岸へ送り別れた人達のことです。
繰り返す転生(旅)の中、一つの人生(短い日々)で出会い、分かれ行く人達への想いというものを、感じてしまいます。
不思議な感覚です。

 一期一会:一生に一度限りの出会い
  *「一期」とは仏教で「一生涯」、「一期一会」は茶道の心得のことば

発売前、この曲は、『縁』(アルバム「予感」に収録)と対をなすもの、或いは『MERRY-GO-ROUND』(アルバム『短篇集』に収録)などと並ぶ曲か、などと思っておりましたが、どうも時間的スケールが違います。
表面上は前向きで明るい表情を見せながらも、その裏側で永劫の苦悩を嘆き悲しんでいるようにすら聞こえます。
何故でしょうか。

思考を繋いだ糸は、ビデオクリップ(PV)かも知れません。
(現在はネット上に沢山転がっている模様です)
占い師?、水晶玉(水盤?)?、不倫?、結婚?、父親?・・・また難解な映像です。
どなたがシナリオを書き監督をされたのか分かりませんが、少なくとも曲そのものの表面的なイメージや意味などからは掛け離れた映像が展開されます。
このビデオには当の本人も出ていることですから、もちろん彼女の指示なり意向が反映されているわけですが、表の言葉と裏の意味が別であることを、ここまではっきりと示した曲はなかなか見あたりません。
完全に中島みゆきワールドです。

初めてこれを見たとき別の曲、『HALF』と『萩野原』(アルバム「EAST ASIA」に収録)思い浮かべました。
『HALF』では"次に生まれてくる時"こそはと誓いながらも、擦れ違い転生してゆく(二つの)魂が歌われています。
また『萩野原』では知らない人の腕の中で「懐かしい野原」の夢を見て涙を流します。
そして、『一期一会』の映像では、『HALF』と『萩野原』が溶けあったような世界の中で、惹かれ合いながらも別の道を辿る二人の姿が、描かれています。

これを同じ世界観と見るか、別物と見るか。
普段中島みゆきを聞かない人でも、この映像を見ると『一期一会』の受け取り方が大きく変わるでしょう。
そしてここに同一性を見いだすとき、中島みゆきの紡ぎ出す宇宙に愕然とするかも知れません。
それは余りにも深遠だと、私は思うのです。

ただ残念ながらそれは、感覚的な物です。
客観的に説明可能であるとは思いますし、出来ればそうしたいのですが、映像の解釈を試みて私は迷路にはまりました。
輪廻転生の時間は未来に向かって流れてゆくと思っておりましたが、それを表現するだけにしては、どうしても時間の流れが素直に回りません。
このビデオクリップでは過去と現在と未来が、同一線上のベクトルに並んでいないように見えます。
過去に向かって現在を繋ぎ、やがて未来を懐かしむ、何やらそんな景色にも見えてきます。
果たしてこれは、何を意味するものでしょうか。


 "短い日々も 浅い縁(えにし)も"

敢えてこの言葉を持ってくる彼女の、感性、巧みな言葉の魔法。
意図的に仕組まれたリドルです。

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今回の曲をどう表現しようかと悩みながら、2週間以上を費やしてしまいました。
まとまらないまま公開です。
立ち向かうつもりなど毛頭ありませんが、分かろうとすればするほど、彼女の曲は深みと凄みを増してゆきます。
やはり、感じることが理解の近道かも知れません。


さて、TOKIOと組んだ「宙船」の成功に気をよくしたのか、再び日本テレビ系ドラマ「受験の神様」(2007年7月~、主演:山口達也)主題歌として『本日、未熟者』(TOKIO 2007年8月発売)で再度組むとの由。
職場で流れる有線で聞いた限りでは、一度で耳に焼き付くような、独特の曲調です。
 柳の下に二匹目のドジョウはいるのでしょうか。

秋にはツアーが始まります。
また春から公式配信メールなどでも「レコーディング中」と言われていましたが、ツアー付近の日程で発売されるのではないでしょうか。(推測です)
なお先日放送されたラジオによると、近々(秋頃?)発売されるアルバムのタイトルは、『アイラブユー こたえてくれ』(※表記不明)とのこと。
詳細は下記サイトにてご確認を。

FM AICHI/矢野雑貨店 全世界大須化計画定例会
 7/21 ON AIR
今回の全世界大須化計画定例会には、矢野きよ実副店長の長年の願いがかなって、中島みゆきさんが登場!

中島みゆきオフィシャルサイト「でじなみ」
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2007年07月31日 23:43に投稿されたエントリーのページです。

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